シスターフッドの物語『彼女たちの部屋』

彼女たちの部屋

じつは3月の国際女性デーのころに読んでいたのに、下書きにしたまま5月になろうとしている。。法務省前のフラワーデモに参加したことも書くつもりだったのに、月日が経つのが早くて焦ります。

先日の『82年生まれ、キム・ジヨン』もそうですが、この本もさまざまな女性の姿と、女性が社会で直面する暴力や困難が描かれています。主人公の女性は弁護士で、あるきっかけから生活に困窮する女性たちが暮らす「女性会館」でボランティアをすることになります。女性会館で暮らす女性たちを通して、主人公が自分自身の居場所を見つけていく過程は、現実の世界ではもっと色々困難がありそう、とは思うけれど、希望のある終わり方がよかったです。主人公のボランティアへ参加する時の心の動きが、私のボランティアへの気持ちとも重なって、少し意外でした。ヨーロッパの人はボランティアが身近そうというか、みんなわりと日常的に参加しているのかなと思っていたので。でも、人によりますよね。

読んでとてもよかったけれど、ちょっと気になったのは『彼女たちの部屋』も『82年生まれ、キム・ジヨン』も、主人公が「仕事ができる女性」として描かれていたこと。物語なので、そうしないと色々話の焦点が合わないのかもしれませんが、別にそんなに仕事ができるわけじゃなくても、仕事が好きな人もいるし、みんなが「仕事ができる女性」目指してるわけじゃないしな、とも思います。

ところで、女性会館(パレ・ドゥ・ラ・ファム)はパリに実在する建物なのですね。Google mapsで見てみたら、歴史を感じるとても素敵な佇まい。作品中で描かれる通り、今も女性が居住する施設でありつつ、エントランスでファッションショーが行わることもあると知って、そういうのいいなと思いました。東京では港区・青山での福祉施設の建設計画に「土地の価値が下がる」と住民が反対してましたね。

日本語

彼女たちの部屋

彼女たちの部屋

単行本

レティシア・コロンバニ

出版 早川書房

翻訳 齋藤 可津子

装画 網中 いづる

2020.06.18

フランス語

Les victorieuses

Les victorieuses

ペーパーバック

Lætitia Colombani

出版 Grasset and Fasquelle

2019.05.15

ドイツ語

Das Haus der Frauen: Roman (German Edition)

Das Haus der Frauen: Roman (German Edition)

Kindle版

Lætitia Colombani

出版 FISCHER

2020.02.26